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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页

青空文庫

こんな時、女の或る人によってはこじれて、一向はきはきしてくれない性質があるものだが、この人は立原を信じているのと、立原の先輩である私にためらわぬものとを同時に示してくれていて、好感があった。

「この離れは堀君や津村君も泊ったことがあるんだから、休みたまえ、一たい汽車は何時なんだ。」

「夜行にしようと思っているんです。」

「では好きに一日ねころんでいたまえ。」

私は毛布二枚を抱えて、離れに立原と、娘さんとをあんないし、障子をぴたりと閉め切り、女中に茶の盆と鉄瓶とをはこばせた。立原は離れの様子を知っていたので、二人は離れにはいると昼の食事まで物音一つ立てないで、引っこもっていた。大きな黒い靴と、ちいさな女の白靴とが、爪先を門の方に向けて仲よくならんでいた。

午後にかれらはお湯にはいり、さばさばした顔付で津村信夫へのおみやげを買いに町に行き、三時のお茶を喫みに帰ったが、女の人は立原の言うことにうなずくだけで、話らしい話はしなかった。どの程度の深さがつきあいにあるのかも、わかりにくかった。ただ、この小がらで地味な、人のこころをすぐに捉えそうに見えるすがたは、立原がたくさんに示さなくともよい愛情を、全部うけとめているふうだった。