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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页
気味悪いほど静穏だ
なにかが
みんなとろけてしまつたやうだ
本を読んでゐると
遠くの方がひとところ
馬鹿ににぎやかになりだした
なんだらう
いまごろ
縁側にでてみると
あんまりしづかなよふけなので
そこだけがぽつかりと明るく
まるで大きな牡丹でもさいてゐるやうにおもはれる
喧嘩のやうだな
いのり
つりばりぞそらよりたれつ
まぼろしのこがねのうをら
さみしさに
さみしさに
そのはりをのみ。
手
しつかりと
にぎつてゐた手を
ひらいてみた
ひらいてみたが
なんにも
なかつた
しつかりと
にぎらせたのも
さびしさである
それをまた
ひらかせたのも
さびしさである
いままでに私は詩友数人の小伝を述説して来たが、その執筆の間に迫るものは、いつもしんしんたる死のはかなさ、避けがたさ、腹立たしさである。しかも数人の詩友の外側で生きのこり、詩友の小伝を書くという為すまじき事を為し果したことである。また私の書いたもので伝記とか研究とかいう、しかつめらしい物はこれらの小伝だけであった。そういう年代著作の整理を故人の間にもとめる仕事は私に不適当であるのに、書き来って此処に立って見れば、こういう窮屈な仕事の一綴りくらいあっても、私のために却って宜いということであった。