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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页
これはまた人類への彼がひそかにしていた予言でもあった。
一読何等の修辞もなく、飾り衒いもなく、見ただけの世界にむかい、彼は何人かを叱り、何人かをいましめていて、しかも荘厳の景色を衒わせていないのである。
桜
冬枯の空に桜は彼女の飾りの無い髪を編んで
すらりと気高く立つてゐる
何と云ふ精緻極る小枝の群
千も万もの愛らしい神秘な小枝が
優しく縺れて
平和に空の下に彼女の美を
意気揚々と示してゐる
この詩がおこされたのは、「彼女の飾りの無い髪を」編んだあたりに、その重い一行のききめから一篇を為すに至ったものに思える。私達はいつも一行をさがすために何ヵ月かかかり、また何ヵ年もかかって見つけるまで、眼と頭の世界にさまようている者である。
この世界にもまた少しも、装飾音のある言葉をならべていない、思うままに彼が辿ろうとしている処に、行きついた感が深い。
どんな女が
どんな女が
どんな子供を抱いてゐるのを見ても
俺は聖母マリヤを思ひ出して
神聖な愛に打たれてしまふ
賤しい下品な顔をした母親が
赤ん坊を抱いてゐるのを町でよく見るが
矢張り美くしい。母の喜びが露骨に見える
赤ん坊は本当に光つてゐる