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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页
ボンヤリと月の光が落ちて来た。
巨人の衣の裾が天上からうつかりづつて居る様に
貧しい家の屋根の上に
皺をつくつてだらりと垂れて居た。
詩話会同人と伊豆に旅行した時、私は下田の町の旅館に皆が夕方散歩に出掛けた後、一人で横臥して夜の町を見には行かなかった。ひどく疲れていたのと、そんな折に一人で残って酒を飲むことが、たまにしかしない旅行なので嬉しかったのである。すると、まだ散歩するとも、しないとも判然しない千家元麿も部屋にのこっていて、行こうか行くまいかと迷うているらしかった。千家はふだんの不摂生のためか、これも酷く疲労して皆の勢いに押されていても、快活に行動を倶にしていられないように見えた。からだ全体ががたがたに見える程、彼は肋骨の見える胸に手をやって横になっていた。よほど疲れているらしいと私は思い、君は散歩に行かないのかと聞くと、気がすすまないと言って動かなかった。たいがい、皆が賑かに出掛けるのを見ると、それに尾いて行かないことのない千家が横臥しているのは、山越えの自動車の動揺が余程応えたらしく見えた。
私は一人の酒からはなれ、千家にも杯をすすめていた。