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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页
これは性欲というものの美観念がつくり出す、瞬間の詩の境のようなものかも知れないと思った。もひとつは夫婦というものがこの僅かな時間に、もどかしげに愛しているということを余りにはっきり感じさせるものであることも、知らねばならないと思った。
静子夫人は帰って来た。知らぬ沢山の男の中から出て来た夫人は、はなやかにぴちぴちした弾みを見せていた。
「早かったね。」
「帰ることばかり気にしていたものですから、お食事もおちついていただいていられない気がしたわ。」
「では何かおあがり。」
「わたくしの顔をいつもじろじろ見ている人が今日も来ていたわ、あの方誰かしら、あんな方とてもたまらないわ。」
「どんな人だ。」
「そうね、何だか六角の顔をしていたわ。遠くからお話したいくせにそれをわざとしないでいるような方なのよ。」
「そういうヤツはよくいるがね、それが女の場合だと余計そんなむら気が起きるもんだ。」
「あの方誰かしら。」
「さあ、作家なんてみな一癖も二癖もあるんだからね、今夜は小説家ばかり集まっていた会だから、いずれその人も小説家らしいね。」
「小説家の方って油断ならないわね。」
「わしだってその油断のならない小説家のはずじゃないか。