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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页
だが、たしかに全部の署名を終ったと思っているのに、一冊だけきちんと窓の閾のうえに置きわすれていたことに、いつも、後で気づいた。おかしな事があるものだと、堀は本の出るたびにいつも冊数が合わないのを送り先の控えと合わしても、数がぴったりと来なかった。
子供の時から精一杯に育て上げられたうちの殿様であり、どこかの俳優の子でもあるような子供が、とうとう一人前以上になっていたことは、どんなに老女に嬉しいことであったろうか。老女は大学を卒たら着せるのだといって、大島のおついの着物を縫わせ、まだ何年後でなければ卒業しない堀のために、箪笥の抽斗にこの紋服同様の大島のおついをしまっていたのである。
私はずっと辰雄歿後の後年、奥さんのたえ子に、大島のおついが一揃えおありでしたろうと言うと、たしかに、ございました、永い間着ていましたけれど、何分にもお古いものでございましたから、もう、ほどいて了いました。切れ端でもあったらお大事になさいというと、それはもう、きちんと糊張りにしてしまって置いてございますと、言われた。口でうまい事をいって何処かに突き込んであるんじゃないかと言うと、たえ子は開き直って、じゃお見せしてもいいわ、畳紙にきちんと包んでございますのよ、いまごろ、いじめようとしたってちゃんとする事は、みな片づけてあるんですもの