轻松读懂日语经典作品
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おうぎの
扇野
山本 周五郎
「面白倶楽部」大日本雄辯會講談社、1954(昭和29)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,727 字 · 67 页
七
――不義者。
栄三郎はその言葉を、はっきり耳にとめながら、そこへ駆けつけるなり、その男を力いっぱい突きとばした。相手は横ざまにはねとばされ、足を取られて転倒した。
「いけません栄さま、待って下さい」
おつるがそう叫んで止めようとした。しかしそれより早く、もう一人の侍が、持っていた瓢を抛りだして、刀を抜いた。
「危ないから向うへいってくれ」と栄三郎はおつるに叫んだ、「早く、――私は大丈夫だ」
そして枯枝を持ち直した。
七
おつると樋の山へいった日から五日めに、石川孝之介が栄三郎を訪ねて来た。
五日という時間は偶然ではなかった。孝之介はそのあいだに知るべき事を知り、なすべき計画の手順をつけたのであった。栄三郎は本式の下絵を描こうとしていた。十帖と八帖の座敷いっぱいに、御殿の襖とほぼ同じ寸法の紙を延べ、初めの下絵をもとにしてあら描きにかかったところであった。この離れ座敷には、あと長四帖がひと間あるが、そこは敷きっ放しの夜具と蚊帳でいっぱいになっている。食事は握り飯と梅干と茶だけで、それはおけいが運んで来るのだが、長四帖まで来て声をかけると、そこで持って来たのを置き、空いている分を持って彼女はそこから母屋へ戻ってゆくのである。