轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

おうぎの

扇野

山本 周五郎

「面白倶楽部」大日本雄辯會講談社、1954(昭和29)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,727 字 · 67 页

青空文庫

十三

と金右衛門は近づいて来ながら云った、「夜の十時の潮で出ますので、絵のようすを知らせてやりたいと思ったものですから」

「もう殆んどあがっています、よろしかったらごらん下さい」

「いやじつは、甚だ失礼でしたが、少し仔細があってさきほど拝見致しました」

「仔細、――」栄三郎は振向いて云った、「なにかあったんですか」

「競作の件です」金右衛門は渋い顔をした、「私はまるで知りませんでした、つい昨日、御家老から聞いて驚いたのですが、どうして仰しゃっては下さらなかったのですか」

栄三郎は黙って肩をすくめた。

十三

金右衛門は家老の石川舎人から聞いたが、競作の事は孝之介の一存であって、舎人自身もごく最近に知ったのだという。それで金右衛門は栄三郎の仕事が気になり、留守ではあるが絵の進行ぐあいを見せてもらった、ということであった。

「まことにみごとな出来で」と金右衛門は続けた、「下絵のときより一段と冴えておりますし、失礼ですが貴方のお作の中でもこれだけのものは初めてではないかと存じました、これならもうどんな相手でも敵ではないでしょう、競作の中止になったのが残念なくらいでございます」