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そうわ
挿話
徳田 秋声
「中央公論」1925(大正14)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,544 字 · 53 页
それは色のくすんだ、縞目もわからないような地味なものであった。
「こんな地味なもの著るの。僕なんかにいいもんだ」
「私は人のように派手なこと嫌いや。それにたんともないさかえ、こんなものなら一枚看板でも目立たんで、いいと思って」
道太は一反買ってやってもいいと思ったけれど、何か意味があるように思われるのが厭なので、わざと言わないでいた。
「僕も何かお礼をしなけあならんけれど、いずれ後にしよう」
「何のお礼をいに、あほらしい。芝居でたくさんや。多勢短冊も書いてもらいましたし」
「おれも金があると、資本ぐらい少し助けてもいいんだが、金に縁のない方で」
お絹は微笑していた。
「あんたももう二三年やろがいに」
「そうかもしれない」
「私も大阪へ行きさえすれば、こんなことしていないでもいいのやけれど、ここも芳ちゃんが旅から帰ってくると、いっしょにやりたいようなことも言うし……。それもやるとすれば、少しお金をかけて売れる子を二人も抱えなければ……」お絹はしみじみ話しだした。
「大阪の方はよほどいいのかね」
「あの子は誰にでも可愛がられる質やさかえ。御主人にも信用がありますけれど、お祖母さんという人に、大変に気に入られているんです。