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しゃよう
斜陽
「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页
そうして私のほうでは、その反対に、だんだん粗野な下品な女になって行くような気もする。なんだかどうも私が、お母さまからどんどん生気を吸いとって太って行くような心地がしてならない。
火事の時だって、お母さまは、燃やすための薪だもの、と御冗談を言って、それっきり火事のことに就いては一言もおっしゃらず、かえって私をいたわるようにしていらしたが、しかし、内心お母さまの受けられたショックは、私の十倍も強かったのに違いない。あの火事があってから、お母さまは、夜中に時たま呻かれる事があるし、また、風の強い夜などは、お手洗いにおいでになる振りをして、深夜いくどもお床から脱けて家中をお見廻りになるのである。そうしてお顔色はいつも冴えず、お歩きになるのさえやっとのように見える日もある。畑も手伝いたいと、前はおっしゃっていたが、いちど私が、およしなさいと申し上げたのに、井戸から大きい手桶で畑に水を五、六ぱいお運びになり、翌日、いきの出来ないくらいに肩がこる、とおっしゃって一日、寝たきりで、そんな事があってからは流石に畑仕事はあきらめた御様子で、時たま畑へ出て来られても、私の働き振りを、ただ、じっと見ていらっしゃるだけである。