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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

11 第十一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页

青空文庫

都へ行って、世帯をもち、夫婦たのしく、暮すのさ」

「おや、三蔵、おまえひとりで、夢でもみるの」

「じょうだんじゃねえ。小野の里を逃げ出した晩から、ちゃんと、約束を交わしたろ」

「めっそうもない。おまえのような野良息子と、たれが夫婦のちかいなどするものですか。――都へ出たいのは、かねがね、私の望みではあるけれど、そんな目的で、云ったのではない。おまえは、路銀もたくさん持っているというし、途々の用心にも、おまえがいれば、何かにつけ都合がよいから、一しょに家を出たまでのこと」

「な、なに」

三蔵は、けんまくを変え、

「じゃあ何か、於通、てめえはおれを、だしに使っただけだというのか」

「なんです、その容子は。おまえは、わたくしの乳母の子ですよ」

「乳母の子が、どうしたっていうんだ。やい、おれを、あまく見るなよ」

「主すじの姫へむかって、いわしておけば、慮外なことを」

「ふ、ふざけるな。もう、堪忍ならねえ。さ、おれと来い」

「どこへです」

「おれの女房だ。だまって、おれについて来りゃあいいんだ」

三蔵は、かの女の腕くびをとらえて、脅しつけた。

「もん句は、あとでいえ。きょうは、離さねえぞ」