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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

11 第十一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页

青空文庫

と、気負い立って、全軍、富山の館を出発した。

大軍、ゆるぎ出して、西するところ、一団の旗本たちに囲まれて、馬上、さんさんたる盛装の武将が見える。

黄ラシャの陣羽織に、南蛮笠をかむり、陣刀、長やかに横たえて、金モールの分銅の旗を馬前に立てさせて行く人こそ、佐々内蔵助成政だった。

ラシャ、モール、南蛮笠などの、当時にあっては、極めて斬新な異国調を、その武装に飾っているところは、宛として、小信長の身なりそのままといってよい。

おそらく、これはみな往年、成政が信長から拝領して得たものだろう。――そして信長亡きあと、今やひそかに、

(見ずや、われを)

と、成政は小信長を気どって、かれに取っての、一世一代の出陣に、晴れを着飾って出たものとみえる。

神通川をこえ、射水の曠野を西へ西へ。やがてまた大河の畔まで来ると、成政は、

「小兵衛を、よべ」

と、駒を降りて、しばし全軍を休息させた。

その間に、かれは富山の城下から連れて来た百姓上がりの炭薪商人――田畑小兵衛という者を、間近によんでいた。

小兵衛は、多年、炭薪を山出しして、北陸の諸都市へ販売している職業がら、山岳地の間道や、諸道の地理にあかるいというので、特に、道案内者として、成政が、その中軍に連れて来た者だった。