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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
11 第十一分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页
家康の用事は、まずすんだと申すものじゃ」
「それや、不届きではござるまいか。――いかに、信雄卿が、世間知らずのお公達でも」
「いや、あの御方のなされそうなことじゃ。そこまで思い至らなかったは、家康の抜かりでござる。信雄卿を世間知らずと思う前に、自分もまだ若いぞ若いぞ、とひとり頭を叩いて、自分を叱っていたところでござる」
「思うに、奸智にたけたあの猿めに、うまうまたばかられたものでおざろう。しかし、信雄卿はともあれ、徳川どのまで、その策に乗って、おめおめ秀吉の下風につき、秀吉が私慾を天下にほしいままにするのを、指を咥えて、見ているという法はござるまい。この後の、御方針は、何となされるか。一たん小牧の兵は撤回されても、ゆくゆくのお考えもまた、おもちでござろうが」
「いや。何もない何もない」
と、家康は、成政の充血した顔を煽ぐように手を振って、
「――さきにもいった通りでおざる。信雄卿に頼まれた義戦なればこそ、武門のてまえ、やむなく羽柴どのの向うに立ったものの、事落着と相成っては、われから大坂表へ戦を仕掛けんなどという考えは毛頭ござらぬ」
「ふーむ。毛頭ないのでござるか」