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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
11 第十一分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页
――秀吉に臣事するほど、卑屈ではなく、秀吉に対抗しても意志を明白にするには、勇気が乏しい。いやすでに、その健康がない。
「……ああつまらん愚痴を。こよいは、どうかしておる。寝よう寝よう」
秀吉は、寝床のうちで、頭を振った。ふと丹羽五郎左の死について、眠りをさまたげられてから、かれの思いは、めんめんと、とめどがなかった。
「五郎左が善良なだけに」
かれの良心に、何となく、あと味のわるいものが、残ったにちがいない。――あくる朝、かれはめずらしく、持仏堂にはいって、丹羽五郎左の位牌に、何か、ぶつぶつ唱えていた。
こんなことは、めずらしいのである。かれにも仏心がある証であろう。食後、茶室へはいり、一筅たてて、そこには、たれもいないのに、姿なき客に、茶礼をして、
「…………」
なにか、しばらく、畳へ両手をついていた。
――かと思うと、すでにその日あたりから、かれの頭脳には、四国攻めの計画が立案されていたらしい。
午すぎ、重なる将を、一室に招いて、かなり長時間、何か、議するところがあった。
鳴門陣
秀吉には、姉がある。また一人の弟と、一人の妹とがある。つまり四人兄弟だった。