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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
11 第十一分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页
城下で、上杉家の兵に、怪しまれたが、兵の付添いをうけて、城門へ行き、
「春日山の太守景勝様には、当城に御在陣ときき、主人羽柴筑前守様にも、千載の好機なれ、ぜひとも、一夕お会い申したいと、陣旅の寸暇をさいて、富山よりこれへ参ってござる。……越水まで、お渡り下さるるもよし、また、主人がここへお訪ねしてもよいと申されます。景勝様の思し召しのほど、如何にや、お伺いに参ってござる」
と、部将を通じて、城中へ申し入れた。
――これは、上杉家の家中の者を、ほんとか? と、眼をまろくするほど、驚かせた。
「まさか、嘘でもあるまい」
とは云い合ったものの、時めく、大坂城の秀吉が、何の予告もなく、突忽として、越後の一城下へやって来るなど、余りにも、信じられない気がしたものらしい。
「どうぞ、ともかく、御書院まで――」
と、使いの木村秀俊は、疑われつつ、城内の一室へ、案内された。
待つ間ほどなく、
「自分は、景勝の臣下、直江と申す者ですが」
と、年ごろまだ二十六、七歳の若い武士が、平服を着、いんぎんな態度で、あいさつに出た。
秀俊は内心、こう伝えたら、景勝自身で倉皇と出てくるかと思いのほか、平服の若侍がただ一人、あいさつに出たので、ちょっと、平静をうごかした。