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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

11 第十一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页

青空文庫

そして、東門の前田口には、家康自身が、その馬じるしたる金扇の下に、旗本たちの鉄槍陣をまんまると従え、前二段に、鉄砲隊を布き、大物見を、その先に伏せさせ、さて、いつでもと落着きすました。

どっと、四方攻めに、押し揉めば、この陣、この軍勢をもって、蟹江一城のごとき、一たまりもあるべきでない――と考えられるのに、家康は、

「城兵が死を決して出てくる公算は多分にある。まず、柵をたてよ。桝形の望楼も築け。そして、城内へ、遠矢、鉄砲を撃ちこみ、昼も夜も眠らすな」

と、念の入った正攻法を守って変えない。

家康の攻めかたは、まったくがんじ絡めである。息もつけない、手も足も出せない。そうした隙なしの攻城法でゆく。

つらいのは、かれの敵だ。

一益も、戦にかけては、百戦の老巧だが、連日の受け身は、一寸きざみの苦戦だった。

しかし、かれを始め、一味の前田与十郎種利も、事破れた以上、降参に出ても死、戦っても死。ままよ、という死にもの狂いに固まっていた。

六月十九日から開始された攻撃に、かれは不屈な力闘を示した。城中およそ一千の兵にすぎないが、甚だ、手ごわい。

殊に、その二十二日。