轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
11 第十一分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页
「よかろう」
家康は、降をいれたが、条件をつけた。――最初の裏切り者、前田与十郎種利の首をさし出すならば――というのであった。
家康からの条件に、おそらく一益は、困惑したろう。
事を謀む初めに、与十郎種利をそそのかして、功成れば、秀吉に取次いで重賞を与えよう――と誘惑したのは、たれでもない、かれ自身である。
しかし与十郎は、かれよりずっと年も下だし、その経歴も位置も、かれの比ではない。大人と小児ほどなちがいがある。
「はて、どうしたものか?」
と、一益は、この条件を、たれにも秘して、ひと晩、迷いに迷いぬいた。
「与十郎の首を切らねば、自分の生命はない。というて、彼を殺すのは」
たとえ、何の事情はない仲でも、共に、籠城をちかい、死を一つに約した友を裏切って、さいごに、自分の生命を保とうとする行為を、当時の人間は、苦悶なしには、考えられないことだった。
まして、自責の上に、明らかな、自分の非は、わかっている。
だが、長くも迷ってはいられない。七月二日を期限に、回答の日は迫っていた。一益は、肚をきめた。
「お示しの条件、心得申してござる」
津田藤三郎ともう一名の近親とを、人質として城外へ出すと共に、この返辞を、家康へ届けさせた。