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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
11 第十一分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页
家康は、開城をゆるす――と城内へ云い送って、翌七月三日、大須賀康高に、武装解除の命をさずけて、城中へやった。
その、前夜。
前田与十郎は、一益の行動から、身の危険をさとって、城外へ逃げ落ちた。
一益は、それを知ると、
「与十郎を落しては、城中すべての者の生命は、城と共に、果てねばならぬぞ」
と、使嗾して、追手をかけ、追手は城外の船入堤で、与十郎を捕え、めった斬りにして、その首を持って帰った。
一益に、首を見せると、
「わしの助かるためではないぞ。城兵、皆のためじゃ」
と、面をそむけた。
首級は、家康の本営へ送られ、即日、蟹江は開城となった。
凱歌の陣に見物されながら、ちりぢりに、あとの生活のあてもなく、落ち別れてゆく人々の姿と心はさまざまだった。
中にも、笑止千万といわれたのは、滝川一益の生命だった。
「麒麟も老いれば駄馬となるというが、いやはや、あの滝川の末路はよ」
「いや、老いてなお、晩節の香いを高うする人もあるがの」
「滝川くずれは、鼻つまみの晩糞じゃ。風上にもおけぬわい」
「くさすなくさすな。あれが人間の弱さじゃろ。――ひと事とせず、心得ておらねばならぬ。