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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

11 第十一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页

青空文庫

「なアに、お姉さまは。わたしたちが笑うと、お叱りになるくせに、御自分では、あんなに、ひとりで、おかしがって」

妹の姫たちが、両わきから突ッつくので、茶々は、いよいよ、笑いがとまらないで、自分でも困ったような姿だった。

秀吉の母は、そこよりも高い位置の、置き畳のうえに坐り、寧子夫人をそばにおいて、見物していた。

ひょうきんな息子どのが演じている狂言舞を、この老母も、折々、笑って見ていたが、寧子にとっては、良人のそんな道化は、つねに家庭の楽屋内で見あきているので、さして珍しい顔つきでもない。

寧子にとって、めずらしいものは、西や東の、あちこちに、局の侍女たちにかこまれている良人の側室のたれかれを、きょうは一だん高いところから、目静かに、観察していられることだった。

つい、長浜にいた頃までは、まだ良人の側室も、おゆうの方と、松の丸の二人ぐらいなものだった。それが、この大坂城へ移ってからは、いつのまにか、三の丸には、三条の局だの、加賀の局というのができ、また、二の丸には、寧子も、

(……まさか?)

とは思っているが、去年、北国攻めの凱旋と共につれ帰った――浅井長政のわすれがたみで、故信長の妹、お市の方のむすめ達三人を――秘園の花と愛で育てている。