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にちにちへいあん
日日平安
山本 周五郎
「サンデー毎日臨時増刊涼風特別号」1954(昭和29)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,297 字 · 56 页
十郎太はあせった、けれども菅田平野はおちついていた。
かれらは陸田精兵衛を拉致し、居宅から書類を押収していった。これはなにが目的であるか、と菅田平野は考えた。菊井なにがしは「汚職の事実が暴露した」ともらしたそうである。たぶん自分たちの悪事を陸田城代になすりつけるつもりだろう、そうするにはいくつかの方法が想像される。「罪状湮滅を防ぐ非常の処置」とは、じつは罪状を城代に転嫁する工作で、最悪のばあいは自白書を強要したうえに、城代の命を縮める(自害という形式で)という手を使うかもしれない。そうだ、こんな思いきった手段をとる以上、そのくらいのことは予想しなければならない、と菅田平野は考えた。死人に口なし、もし精兵衛が強要されて自白書を書けば、かれらは精兵衛を生かしてはおかないだろう。いや、初めからそのつもりで「非常処置」なるものをとったのかもしれない。
――そうだ、たしかにそれに相違ない。
心の中で頷きながら、菅田平野は鼻毛を抜いた。右手の拇指と食指で、巧みに鼻毛を摘み、呼吸を計ってくいっと抜き、そうして大きなくしゃみをした。
「失礼しました」と菅田平野は云った、「――そこでうかがいたいのですが、井坂さんが奸物粛清をやろうとした計画と、その盟友の人数を聞かせてくれませんか」