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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页

青空文庫

彼の心には先月亡くなったお玉と云う婢のことが浮んでいた。若狭の生れで宇治の方に伯母が一人あるだけで、他には親も兄弟もない女であった。円顔の小作りな女で飾屋へ四五年も奉公している間に、衣服は一枚もこしらえずに百目ほどの銀をためた。

「そんなに銭ばかり集めて、どうするか」

ある日女房が冗談はんぶんに云うと、お玉はこうこたえた。

「お父さんやお母さんの位牌を、お寺へ立てたいから、それで集めております」

そして、昨年の秋になってお玉は常楽寺と云う寺へ両親の位牌を立て、祠堂料として銀七十目を収めたが、その残りの三十目は主人に預けてあった。それが冬になって病気になって次第に重くなって来たので、宇治の伯母の許へ引とられて養生していたが、とうとう先月の十一日に亡くなった。――九兵衛はふと預かって未だそのままになっている女の銭のことを、思いだした。

「お玉の銭を預かっていたな」と、云って彼は女房の顔を見た。

女房は九兵衛と眼を見合しただけで声は出さなかった。蠅はまだ頭の上の方で羽音をさしていた。

「あんなにして、親の位牌をたてた女じゃから、彼の銭で供養でも受けたいと思うておるかも判らんな」