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にほんイデオロギーろん
日本イデオロギー論
戸坂 潤
――現代日本に於ける日本主義・ファシズム・自由主義・思想の批判
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 263,376 字 · 511 页
之は自由主義者が往々考えるように大衆の悟性が進歩したからではなくて、逆に現実の関係が発展して夫と観念との関係が訂正された結果であり、其結果が偶々大衆の所謂進歩ということなのだが、とに角、之によってデマゴギーは一つ一つ効力を失って行くことになる。デマゴギーはもはや大衆支配者にとって有効でなくなる。なぜなら〔支配者は〕デマゴギーの意識的な発布者としての責を取らねばならなくなるから。――之は当然な事で判り切ったことだが、併しここからデマゴギーに新しい機能が与えられ始める。と云うのは〔支配者は〕自分みずから発するデマゴギーに対する大衆からの批判そのものを、逆に却ってデマゴギーと呼び返すことに考えつくからなのである。かくて流言蜚語とその取締りとが〔支配階級の〕一大方針となる。大衆は今や、デマゴギーに動かされないと見ると、逆にデマゴギーの流布者と見立てられる。
だが流言蜚語すると想定されたこの大衆は、実はもはや例の被デマゴギー性をもつ妄動する愚衆やモッブではあり得なかったわけだ。なぜなら〔支配階級の〕発布するデマゴギーに対する、大衆側の批判こそこの所謂流言蜚語だったからである。