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にっき

日記

宮本 百合子

26 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,562 字 · 16 页

青空文庫

四月九日

四月九日

網野さんの「妻たち」は質実な立派な小説だ。立派と云える小説がこの頃すくないから、こういうものをかく人がいることはうれしい。

いろいろ小説がかきたくなって、昨夜はそれこれと考え、夜明けて牛乳をのんでから初めて眠った。

こぶしの花。

三月下旬から四月にかけて。

○雨がふりつづいて晴れると、きつい風が吹いている。ガラス戸がカタカタ鳴る。雨戸をあけた途端、さっと幅ひろく風がふきこんで、廊下の柱にかけてある花(山吹の新芽と紫の矢車の花)が、くるりと一まわりした。そんな風。

○チカチカと光る白いこぶしの花

○子供の笑っている顔

○GとFとの友人関係、奈良で興隆寺の仏像の写真をF買う。「これをやろうと思うわ」「却って怒るわよ、お金がないってわかっているのに、そんなものやると気をわるくするわよ」

Fにはそれが妙で、かえってから「でも私やっぱりやるわ、きっとよろこんでくれると思う」「じゃそれがいいわ」そしてそれを持って来るのはG。自分はラファエリーの色刷を私のために買って来ている。

その話あとできいて妙に思う。そのとき「あなた、いくらもって行ったの?」「姉さんが門司までの旅費五十円くれたでしょう、それからおかあさんにかり」