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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
岡本綺堂『明治劇談 ランプの下にて』。同一底本的分册已合并为一书。收入:明治劇談 ランプの下にて、明治演劇年表。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 页
『東京日日新聞』が関直彦氏の手を離れて伊東巳代治男の手に移ると同時に、菫坡老人も社を去ったので、わたしは老人に接近する機会を失ってしまった。その後も銀座の宅へ時々は訪ねて行ったが、だんだんに足が遠くなって、あのときにこういうことも訊いて置けばよかったと、今さら悔まれることがしばしばある。
榎本虎彦君ともその頃はじめて懇意になった。明治二十三年の夏、議会の選挙が初めて行なわれたときに、福地桜痴居士は『東京日日新聞』に「仙居の夢」という諷刺小説を連載したので、その原稿の使で榎本君は編集局へたびたび来た。その当時、榎本君は桜痴居士の家に寄留して、一種の書生のような形で先生の用も勤め、傍らに歌舞伎座の作者部屋に出勤していたのであった。歌舞伎座の絵本に、狂言作者竹柴なにがし並木何某とある中で、榎本君ひとりが榎本虎彦と本名を名乗っているのが、その時代としては珍らしく見られた。
榎本君と懇意になるに連れて、榎本君はいっそ何か書いて福地先生の添削を受けてはどうだと私に勧めた。桜痴居士には前年すでに歌舞伎座の楽屋で会っていることを榎本君も知っていたが、それでも公然出入りをするには、やはり改めて団十郎に紹介してもらった方がよかろうというので、わたしは父から団十郎に話してもらうことにした。