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めいじげきだん ランプのもとにて

明治劇談 ランプの下にて

岡本 綺堂

岡本綺堂『明治劇談 ランプの下にて』。同一底本的分册已合并为一书。收入:明治劇談 ランプの下にて、明治演劇年表。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 页

青空文庫

川上のオッペケ節

わたしが極まり悪そうに御無沙汰のお詫びをすると、居士はいつもにこにこしながら、「どうだい、相変わらず勉強しているかい。」などと言ってくれた。榎本君はふたたび居士のもとへ帰って歌舞伎座の人となったが、わたしはもう帰らなかった。そうして嗣子の信世さんのところへも御無沙汰をしていたことを、この機会にお詫びをしなければならない。

桜痴居士は行儀の好い人であった。どんな暑中でも膝をくずさずに、かならず机の前に端坐して筆を執っていた。

川上のオッペケ節

わたしの二十歳の年には、初めて桜痴居士を築地の宅に訪問したという以外に、更に記憶すべき重大の出来事があった。それはいわゆる“壮士芝居”なるものを初めて中村座で見物したことである。

わたしは今ここで壮士芝居の歴史を説こうとするのでない。それをくわしく語っていたら非常に長くなる。ここではただ、それが角藤定憲という自由党の一壮士によって大阪に創められて、さらに川上音二郎によって東京に輸入されたということだけを註して置きたい。角藤に芝居を勧めたのは中江兆民居士である。居士はその当時、かの保安条例で東京を逐われて、しばらく大阪に住んでいた。