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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
岡本綺堂『明治劇談 ランプの下にて』。同一底本的分册已合并为一书。收入:明治劇談 ランプの下にて、明治演劇年表。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 页
爾来四十余年といえばかなりに長い月日ではあるが、その間の推移を考えると実に今昔の感に堪えない。「泉三郎」は明治三十九年の春、先代の片岡市蔵――その頃は十蔵といっていた――が日露戦争から凱旋した時に、今の幸四郎や父の市蔵らと共に歌舞伎座で再演した。
「泉三郎」で思い出されたのは、その翌月、歌舞伎座で再び「泉三郎」を上演するようになったことである。これは在来の「腰越状」の泉三郎で、前の「泉三郎」とは何らの関係がある訳ではないが、「泉三郎」がまた出るというので世間の噂にのぼった。歌舞伎座でも最初からこの狂言を択んだのではなく、一番目は桜痴居士作「太閤軍記朝鮮巻」五幕、二番目は「高田の馬場」、大切浄瑠璃は「雪月花」という組合わせで開場したのであるが、一番目の四幕目に朝鮮の王妃と王子らが我が陣所に捕虜となっているところへ、朝鮮の勇将征東使伯寧がおなじく捕虜となって来て、敵中で君臣対面の場がある。加藤清正は団十郎、王妃は先代の秀調、伯寧は八百蔵で、作者は朝鮮側の面目を立てるために忠勇なる伯寧を点出して、それを当時売出しの八百蔵に勤めさせたのであった。
おおわらわの伯寧が縄付きの姿で王妃らの前に平伏し、自分らが不覚にして王妃らにかかる恥辱を見せたる罪を謝するところは、文字通り声涙倶に下るの悲壮な場面で、この場が最も好評