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めいじげきだん ランプのもとにて

明治劇談 ランプの下にて

岡本 綺堂

岡本綺堂『明治劇談 ランプの下にて』。同一底本的分册已合并为一书。收入:明治劇談 ランプの下にて、明治演劇年表。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 页

青空文庫

菊五郎は自分が強情に提出した狂言であるだけに、その責任も重いわけで、警視庁の中止命令に対して、「一旦許可して置きながら、また出直して差止めを喰わせるなんて、そんなチョボ一があるものか。」と、彼はひどく憤慨したとか聞いている。また警視庁側の弁明によると、最初あの脚本を提出して来たときに、こういう物はいけないと言って一旦つき戻したところが、さらに押返して持って来て、十分に添削したからどうぞ許可してくれと嘆願するので、二、三の注意をあたえて、ともかくも許可することにしたが、さてその舞台をみるとやはりいけない。殊に世間の攻撃が激しい。かたがた更にその許可を取消す事になったのだと言っていたそうである。とにかくにこれで手痛い攻撃をうけたためか、歌舞伎座はその年の十一月まで引きつづいて閉場していた。

中止問題とは別物であるが、この狂言中に菊五郎が一部の観客の反感を買った事件があった。それは彼が小猿七之助の役で父の網打七五郎の家へたずねてゆくと、父は死霊の祟りに悩まされている。その世話場で、かれは七五郎の松助と向かい合って、近ごろ死んだ彼の菊之助の悔み言を言い、悲しくて悲しくてならないなどと、しきりに涙をこぼしていろいろの愚痴をいう。