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めいじげきだん ランプのもとにて

明治劇談 ランプの下にて

岡本 綺堂

岡本綺堂『明治劇談 ランプの下にて』。同一底本的分册已合并为一书。收入:明治劇談 ランプの下にて、明治演劇年表。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 页

青空文庫

似顔絵と双六

似顔絵と双六

前に言ったようなわけで、芝居というものに対するわたしの第一印象は余り好くなかった。好くなかったというよりも、芝居というものはどうも判らない、面白くないものであるということに自分だけは決めてしまった。それには団十郎に対する一種の反感といったような不快の感情も手伝っていたらしいが、ともかくも芝居というものが好きになれなかった。定さんの茶番や大奴さんのお浚いが比較的に面白かったのは、平素からその人たちをよく識っているという点から出発しているので、なんという人だかも識らない俳優たちが何だかわからない芝居を演ずるのは、決して面白いものではなかった。その以来、わたしは芝居見物などに行きたいとは思わなかった。家の人たちが芝居見物にゆく場合には、わたしはいつも留守番をしていた。そうして、例の幕の内や口取の土産を買って来て貰うのを楽しみにしていた。

その明くる年の六月、「霜夜鐘十字辻筮」が新富座の二番目狂言として上演された。これは二代目河竹新七が巡査の保護、士族の乳貰、按摩の白浪、天狗の生酔、娼妓の貞節、楠公の奇計という六題を五幕の世話狂言に脚色したもので、その正本は――その頃は脚本とはいわない、無論に戯曲などとはいわない、すべて正本と唱えられていたのである――『歌舞伎新報』