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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
岡本綺堂『明治劇談 ランプの下にて』。同一底本的分册已合并为一书。收入:明治劇談 ランプの下にて、明治演劇年表。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 页
そのときの千歳座は新富座と競争の意味で特に値段を割引したものらしかったが、今から思えば嘘のような安値なものであった。勿論、安値であったればこそ、わたしも自分の小遣い銭を掃いて出かけたのであるが、桟敷一間二円八十銭、高土間一間二円二十銭、平土間一間一円三十銭、そのほかに各一間に対して敷物代として五十銭を取るのであるから、平土間一間が一円八十銭に相当するわけで、それを五人に割当てると、一人分の観劇料がわずかに三十六銭である。その当時と今日とは、金の値の相違すること言うまでもないが、仮りにそれを十倍とみても三円六十銭に過ぎないのであるから、それが安値であったのは争われない事実であろう。しかもその時は初日無代価、二日目が半値段というのであった。
観劇料に連れて、飲食物の価もまた廉かった。菓子と弁当と鮨と、いわゆるかべすの三種揃って一人前二十二銭、しかもそれは上等の部で、中等は三種揃って十七銭というのであった。わたしたちは平土間へはいって、上等のかべすを註文したので、観劇料と飲食料とを一切締めて二人分一円十六銭、出方に大枚二十銭の祝儀をやったのを合わせても一円三十六銭に過ぎない。