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しょうわよねんのぶんだんのがいかん

昭和四年の文壇の概観

平林 初之輔

「新潮 第二六年第一二号」1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,557 字 · 29 页

青空文庫

ある、この場合には評価の基準は、まず政治的基準により、次に芸術的基準によるという風に、二重の基準をもってのぞまねばなるまいというのであった。したがって、もちろん、一般には、そういう政治的機能をはたしていない作品でも芸術品としてはすぐれた作品があり得るし、また実際にあるということを主張したのであった。しかも、実際、左翼における批評では、従来私が指摘したような評価の基準が採用されていたのだ。誰が芸術的に、ナップ〔(全日本無産者芸術連盟)〕所属の大部分の作家を、島崎藤村よりもすぐれていると考え得ただろう。しかし左翼の批評家のうちで、誰が、自らのグループの作家をまず賞揚しなかっただろう。

実際この論戦は、ある人によると、明らかに私の敗けにおわったそうであるが、たとい議論にはまけたとしても(実際数から言えば一対一〇位のスコアでまけた)、事実において、左翼批評界における政治主義が、だんだん緩和されてきたという消極的な結果をもたらしたことだけは争われなかった。

この問題およびその他の問題において、今年の批評界では勝本清一郎、蔵原惟人、岡沢秀虎、谷川徹三の四氏が私の印象には最もあざやかにのこっている。