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しょうわよねんのぶんだんのがいかん

昭和四年の文壇の概観

平林 初之輔

「新潮 第二六年第一二号」1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,557 字 · 29 页

青空文庫

だが産業合理化の段階にはいった資本主義の現段階では、清貧に甘んじたり、怠けていたり、濫費したりすることは、文人にとっても美徳ではなくてかえって悪徳となる。今や刊行物、換言すれば出版資本の集中と、出版物の大量生産とは、流行作家をますます流行作家とし、二流以下の作家を、もはや名前だけでは何の力にもならないという位置に没落させることによって、急激に作家の淘汰を行いつつあるように思われる。ちょうどそれは金融寡頭政治の社会とよく似ている。第一流の地位は独占的で、あらゆる変化を通して強固であるが、第二流以下においては、自由競争が最も露骨に、最も無慈悲に行われる。二流作家とか中堅作家とかに属する人たちは、もはや、かけだしの新作家と同じ立場にたって、存在のために戦わねばならぬのである。

こういう形勢の下では、精力的な作家が生きのこる。前にあげた四人は、ただ思いついたままにあげたに過ぎないのだが、四人が四人とも、著しく精力的なのが目立つ。いまイギリスの通俗小説の寵児、エドガー・ウォーレスのごときは、数週間も彼の新刊が出ぬと、ウォーレスは病気でもしたんじゃないかと読者があやしむということだ。