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ちえのいちたろう

智恵の一太郎

江戸川 乱歩

象の鼻「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年1月<br>消えた足跡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年2月<br>智恵の火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年3月<br>名探偵「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年4月<br>空中曲芸師「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年5月<br>針の穴「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年6月<br>お雛様の花びん「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年7月<br>幼虫の曲芸「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年8月<br>冷たい火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年9月<br>魔法眼鏡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年10月<br>月とゴム風船「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年11月<br>兎とカタツムリ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年12月<br>白と黒「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年1月<br>風のふしぎ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年4月<br>飛行機を生み出すたのもしい力「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年7月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 67,333 字 · 134 页

青空文庫

「さあ、手を出してごらん」

「え、手をどうするの」

「まあ、いいから出してごらん」

一太郎君が、いわれるままに手をさし出すと、高橋さんは何を思ったのか、今作った紙のくだを口にくわえ、一方のはしを一太郎君の手の甲にむけて、ふーっと強く息をふきつけたのです。

「寒い、寒い」

一太郎君は、思わず手をひっこめました。

「どうだ、寒いだろう、……わかったかい」

「え、何が」

「つめたい空気でなくっても、風は寒いということがさ。僕の息は体の中であたたまっているから、この部屋の空気よりは暖いのだよ。その暖い息をふきつけても、君は寒いっていったじゃないか。どういうわけだか、わかったかい」

「だって、それは、息が長いくだの中を通って外に出ると、この部屋の空気よりひえてしまうんでしょう。でなけりゃ、寒いはずがないや」

「ふん、そうかね。それじゃ、もう一つ実験をして見せてやる」

高橋さんは立ち上って、部屋の柱にかけてあった寒暖計を取りはずして来ました。

「十五度だ。今この部屋の空気の温度は十五度なんだよ。ところで君にたずねるが、僕がこの紙のくだで、寒暖計の水銀の玉に息をふきつけたら、水銀は上ると思うか、それとも下ると思うか」