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ちえのいちたろう

智恵の一太郎

江戸川 乱歩

象の鼻「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年1月<br>消えた足跡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年2月<br>智恵の火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年3月<br>名探偵「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年4月<br>空中曲芸師「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年5月<br>針の穴「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年6月<br>お雛様の花びん「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年7月<br>幼虫の曲芸「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年8月<br>冷たい火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年9月<br>魔法眼鏡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年10月<br>月とゴム風船「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年11月<br>兎とカタツムリ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年12月<br>白と黒「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年1月<br>風のふしぎ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年4月<br>飛行機を生み出すたのもしい力「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年7月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 67,333 字 · 134 页

青空文庫

冷たい火

どうだね、何とうまくできているじゃないか。神様はこんな小さな虫けらにさえ、これだけの智恵をおさずけになっている。この世界をおつくりになった神様の考え深さは、ほんとうに恐しいほどじゃないか」

伯父さんのお話を聞きおわった一太郎君は、いつか蜘蛛の曲芸を見せてもらった時と同じような、ふしぎな感じにうたれて、しばらくは口もきけませんでした。この世界というものは、ほんとうにすばらしい。どんな小さな生きものにも、何かしら、びっくりするような、神様の智恵があらわれている。その世界に生きているというのはなんて楽しいことだろうと、身にしみて感じないではいられなかったのです。

「伯父さん、そのトックリバチって、どこにいるんですか」

やがて、一太郎君は、ふと気づいたようにたずねました。

「どこにだっているよ。東京附近にはたくさんいるんだ。お前もトックリバチの巣をさがし出して、ファーブルのまねをして、中をのぞいて見るといいね」

伯父さんは椅子から立ち上って、一太郎君の肩に手をかけて、にこにこしながら、そうおっしゃるのでした。

冷たい火

八月のある暑い日の夕方のことです。一太郎君が、お母さまから言いつけられたお使の帰り道、近所の高橋さんの門の前を通りかかりますと、大学生の高橋一郎さんがそこに立っていて、一太郎君に声をかけました。