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ちえのいちたろう
智恵の一太郎
江戸川 乱歩
象の鼻「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年1月<br>消えた足跡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年2月<br>智恵の火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年3月<br>名探偵「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年4月<br>空中曲芸師「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年5月<br>針の穴「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年6月<br>お雛様の花びん「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年7月<br>幼虫の曲芸「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年8月<br>冷たい火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年9月<br>魔法眼鏡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年10月<br>月とゴム風船「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年11月<br>兎とカタツムリ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年12月<br>白と黒「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年1月<br>風のふしぎ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年4月<br>飛行機を生み出すたのもしい力「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年7月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 67,333 字 · 134 页
学生服を着た少年が、遠ざかって行く汽車を見おくりながら、話しかけました。この少年はおなじみの一太郎君です。話しかけられたおじさんは、いつも一太郎君におもしろい理科の話をして下さる、あの農学博士の伯父さんです。一太郎君は久しぶりに田舎の伯父さんのお家をたずねて、二人で近所に出かけた途中なのです。
「うん、ずいぶん早いね。汽車にくらべると、僕たちがこうして歩いているのは、兎と亀どころじゃない、兎とカタツムリほどのちがいがあるね」
伯父さんはそう答えて、線路にそったたんぼ道を歩きだしましたが、しばらくすると、ふと何か思いついたように、一太郎君の方をふりむいて、こんなことをいうのでした。
「汽車はずいぶん早いが、その汽車よりも早いものが、まだいろいろあるね」
「ええ、あります。自動車、飛行機、ロケット、それから……」
「それから?」
「あ、そうだ。それから、大砲のたまです」
「うん、大砲のたまは、飛行機よりも早いね。それから?」
「えーと、それから……」
一太郎君は、そこで行きつまってしまいました。その外に汽車より早いものなんて、ちょっと思い出せなかったのです。
「思い出せないかい。