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くらいそら
暗い空
小川 未明
「早稲田文學」1908(明治41)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,106 字 · 11 页
三
私はこの何だか落付のない、地底の呼吸を聞き取れるように覚える製造場の中へ入って見たくなった。その入口らしい処にはただ粗末な二本の杙が建っているばかりで内の様子を覗いたけれど、ただ一人の土方等の姿すら見えなかった。
三
まだ日は西に傾たばかりだ。製造場の裡には、土方等の使っている鶴嘴や、土堀る道具が置れてある。赤い火はとこんとこんと厚い鉄の戸口の隙間から見えて、ドドー、ドーンという車の廻るたびに地底を穿っている機械の響が聞き取られる。その響きは胸に応えて、地底の秘密というようなことを考えさせた。
私は何の気なしに一歩礦場の中へ踏込んだ。やはり四辺に人の気はいがせなかった。私は不思議に思って怖る怖る誰かに怒鳴られはせぬかと心に不安を感じながら二歩、三歩中へ入って行った。けれど何処を見ても、一人の姿すら見えなかった。きっとあの火の燃えている処には人がいようと思って、怖る怖る足音を忍んで鉄の戸の側に近寄って私と隙間から内を覗いたが、ぼうっと火気の熱り気を感じたのみで何にも目に入らなかった。これは益々不思議だと考えて、私は此度は自由勝手に四辺を歩いて見た。