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きりゅうつうしん
桐生通信
「読売新聞 第二七七五五号~第二八〇二五号」1954(昭和29)年3月11日~12月6日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 16,394 字 · 33 页
一月のなかばまでは東京の冬と同じようにいつも太陽がかがやいています。雪が降りだすのは一月なかばすぎてからですね」
土地の人々がこう教えてくれた。私がこの土地で育ったころは一冬中海鳴りが町まできこえていたものだ。その海も波一つない湖水のようで一冬吹きつける北風すらもなくただ海も浜も砂丘も一面にまぶしく光っているだけであった。
私が育ったころでも大雪の降りだすのは一月なかばをすぎてからでそれだけは変りがないが、十月なかばからそれまでというものはずっとしぐれとみぞれが降りつづき、空は低くたれこめて太陽が連日失われているのが例であった。まれに太陽が顔を出すとそれは雪のあとで、ちょっとの時間で町中をドロンコにしてしまう。冬の太陽というものはそういう悪作用をのこすためにちょっと顔を見せるだけのものであった。そして子供たちにすらあきらめきった考え方や話の仕方を植えつけたものだ。
十月なかばから一月なかばまで関東と同じように太陽が照っているなら、雪国の冬の暗さの根本条件がなくなったようなものではないか。海岸線にある新潟は関東平野も奥地の桐生よりはむしろ暖かいような陽気であったし、関東平野だって一月なかばをすぎると年に二度か三度は一尺前後の雪が降るのだ。