轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

さくらのみのじゅくするとき

桜の実の熟する時

島崎 藤村

「文章世界」1913(大正2)年1~2月、1914(大正3)年5月~1918(大正7)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,569 字 · 222 页

青空文庫

夕飯が済むか済まないに、もう納涼がてらの客がどかどか入込んで来る。一しきり客の出さかる頃は、廻廊のように造られた伊勢崎屋の店の内が熱い人の息で満たされる。明るくかがやかした燈火、ぞろぞろと踏んで通る下駄穿の音、その雑踏の中を分けて、何か品物が売れる度に捨吉は入口と帳場の間を往来した。

「アア、真勢さんも売ってるナ」

とそう捨吉は言って見た。

一日のうちの最もいそがしい時は毎晩三時間程ずつ続いた。帳場の正面に掛っている時計が九時を打つ頃になると、余程店が透いて来る。奥の方からは下女が茶を汲んだ湯呑を盆に載せて、それを真勢さんや捨吉のところへも配りに来た。

真勢さんは簡単に自分の過去を語った。この人は小学校の教員をしたこともある。教会堂の番人をしたこともある。道具屋を始めたこともある。靴屋となり、針製造人となり、それから朝鮮の方までも渡った。ある石蝋の会社にも雇われた。電池製造の技師ともなった。古着商ともなり、蝙蝠傘屋ともなった。その他自分で数えようとしても数え切ることの出来ないような種々様々の世渡りをして来たことが引き継ぎ引き継ぎ真勢さんの口から出て来た。