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ふくろうのめ

梟の眼

大倉 燁子

「キング 一三巻三号」1937(昭和12)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,354 字 · 23 页

青空文庫

ベルを鳴すまで、――来ちゃいけないよ」と我知らず、きつく云って、陽子は胸をドキドキさせながら、応接室のドアをさっと開けた。果して――。

薄墨色の女は、にこやかに笑いながら一礼して、

「昨日は失礼いたしました。突然で――嘸ぞ吃驚なすったでしょう?」

と馴れ馴れしく云う。陽子は早く用件を云ってもらいたかったので、ただ、

「いいえ」と云って、微笑したぎり黙っていた。

婦人は燐寸を磨り、器用な手つきで巻煙草に火を点けた。何を云い出されるかとハラハラしながら、煙の行衛を見ていると、薄墨色の女はやがて煙草の喫いかけをぐっと灰の中にさし込んで、

「突然、伺ッた用件、――奥様、――もうお分りでございましょう?」

と意味ありそうな眼をして、にやりと笑った。

陽子は唇を震わし、眼を膝に落して、

「何ですか、私には、――ちッとも――」と微かな声で答えた。

「あら、まだお分りになりませんの? 昨日、お預けしておいたものを――、頂戴に上ったんですのよ」

「?」

「オホホホ。とぼけていらっしゃるの? 奥様、お人が悪いのねえ。あのダイヤの指輪、――ポケットの中へ入れておいた――」

彼女は一時に呼吸が止ったかと思うほど、驚いた。