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ふくろうのめ

梟の眼

大倉 燁子

「キング 一三巻三号」1937(昭和12)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,354 字 · 23 页

青空文庫

世界的の名人

私もせめて、一目拝みたいと思ってるんですが――」

とすっかり隔てがとれて、まるで仲間同志に話しかけているような調子だった。

あれほどまでに思い込んでいたダイヤだのに、どうしたものか、今はもうちっとも欲しくなくなった。返してしまってからは、反ってさばさばとして、心が軽くなる位であった。

薄墨色の女が帰ると直ぐに陽子は実家へ行って、春樹に会い、昨夜からの出来事を話し、

「ダイヤを渡してやッたけれど、――大丈夫でしょうか、私、補助罪になりやしないかと思って――」

「現行犯でなければ大丈夫さ。尤も前科があれば別だけれど――、とにかくそれほどの女だ、心配はないよ。――そして、何かい、世界的の奴が観光団に交って来ているんだって? そいつあ愉快だな、その女を俺に紹介してくれないかなあ」と春樹は眼を輝かせて云うのだった。

世界的の名人

観光団歓迎の大舞踏会は、グランド・ホテルの大ホールで開かれた。

平松春樹は瀟洒たる服装で、美しく着飾った妹の陽子を伴い、会場へ急いだ。入口には主催者側の紳士淑女がずらりと十数名一列に並んで、来客を受けていた。陽子はちょっと気後れがしたように躊躇っていたが、兄を顧みて口早に云うのだった。