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ふくろうのめ

梟の眼

大倉 燁子

「キング 一三巻三号」1937(昭和12)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,354 字 · 23 页

青空文庫

たとえそれが意識してやった事でないとしても、ポケットに入れるところを誰かに見られはしなかったろうか。訴えられたらどうしよう? 一層返しに行こうか。――それも変だ。反って疑われるかも知れない。――では、このまま、黙って、知らぬ顔をしていようか――。

彼女は指輪を半紙に包んで、取り敢えず人目に触れない箪笥の抽斗の奥に入れて、錠を下し、熱した頭を冷す積りでヴェランダに出た。夫に打ち開けて相談してみようか、しかしそれも心配だった。潔癖な彼が、どんな風に誤解しないとも限らない。

それにもう一つ、陽子の胸を刺すような心痛があった。それは他でもない、兄のことである。

春樹は風采も立派、学校の成積も良く、才物であったが、どういうものか、幼少の頃から盗癖があった。が、彼に云わせるとこうだ。世間の人は皆間抜けで、馬鹿揃いだ。すきだらけだから盗まれる。盗んでくれと云わんばかりな顔をしているのに、自分の不注意を棚に上げて、人に盗癖があるなんてチャンチャラおかしい。その気持ちは彼女にもよく分った。

それに春樹は物を盗んで、それをどうしようというのでもない、ただ、他人が後生大切に身につけているものを、こっそりと掏りとる、それが愉快なのだ、その瞬間、実に何とも云えない快感を覚える、それを味いたいばっかりに、罪を重ねているのだが、盗ん