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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

03 第三部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,285 字 · 330 页

青空文庫

宗休は、なにをしにゆく、といいたげな眼で七十郎を見た。

「熊沢了海どののことはいつか申上げたと思います」

「近江の蕃山どのか」

「いま京におられるのですが、ぜひ会って、御意見を聞きたいことがあるのです、手紙でも再三うかがったのですが、どうしてもいちどじかに会って、直接、御意見を聞きたいのです」

宗休は白く厚い眉毛の下から、じっと七十郎の眼をみつめた。

「それは、仙台の紛争、についてか」

「――そうです」

「やめることはできないのか」と宗休は云った、「おまえが、仙台家中の紛争に、かかわっているということは、うすうす知っていた、これまでは小野との関係があるから、やむを得なかったかもしれない、しかし、新左衛門が死に、おつうには子がなかった、采女は養子だから、血からいえば縁が切れたことになる、もうそんなことにかかわっている必要はないではないか」

「それはそうかもしれませんが」

「おまえには学才もあり兵法にも精しい、親の口からこんなことを云うのは愚かしいかもしれないが、文武の道でりっぱに一家を成すことができる筈だ」

「私は、――こういう性分で」と七十郎は頭を垂れて云った、「どうもひとところにおちつくということができませんし、まことに不孝者で、申訳がないと思いますが、お側にはお兄上がいることですし、どうかいま暫く、私のことはお捨ておき