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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
03 第三部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,285 字 · 330 页
下さるようにお願いします」
「それほど、仙台のことが大事なのか」
七十郎は、はい、と頷いた。
「仰しゃるとおり、わが家は伊達家から一粒の扶持にも、あずかっておりません、なんの恩顧もないと、云えば云えるかもしれませんが、領内に住み、代々安穏にすごして来たという事実は動かせません、たとえ主従の関係はなくとも、領内に安住している以上、その家中に不祥の騒動が起こっているのを、よそ眼に見すごすわけにはいかないと思います」
「はっきりした名分だな」と宗休は苦い顔をした、「そんな名分を付会することはない、好きだからやる、と云うだけでいいのだ」
「しかし父上」
「もうよし、わかった」と宗休は手を振った、「ただひとこと云っておくが、無謀なことをして、親兄弟に災禍を及ぼしてはならぬ、それだけはよく心得ておけ」
七十郎は北村に滞在するあいだ、父の言葉が胸につかえていた。
――親や兄弟に災禍の及ばぬようにしろ。
父も年をとったな、と彼は思った。兄は父が気が衰えたと云ったが、正しくそのとおりであろう、まえにはあんなではなかった。あんなめめしいことを云う父ではなかった。男の子が事を為そうというばあい、「親きょうだいに迷惑をかけるな」