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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

03 第三部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,285 字 · 330 页

青空文庫

断章(十二)

こうして、三人毒死の事は、辛くも隠蔽された。

断章(十二)

――御評定はいかがでございました。

「酒の支度をさせろ、疲れた」

――お数寄屋に支度を致させました。

「女どもはさがれ」

――なにか御機嫌を損じましたでしょうか。

「原田の心底がわからぬ」

――はあ。

「矢崎舎人は家禄召し上げ、領内追放ということに定った、にも拘らず原田は顔色も変えなかった」

――反対する筈だという御意でしたが。

「しない筈がない、原田は必ず反対し、抗議を出す筈だった」

――罪は密通ということでございました。

「もちろん拵えたのだ」

――はあ。

「彼は上田帯刀の妻子を岩ヶ崎へ送るところだった」

――物頭上田帯刀は、お咎めの筋があって家禄没収、その身は片倉さまにお預け、妻子は古内(源太郎)どのに預けとなり、矢崎舎人が命ぜられて、帯刀の妻子を送ってまいった、ということまでは承知しております。

「古内の館、栗原郡岩ヶ崎まで送ったのだ」

――事はその途中でございますな。

「宿で舎人が、上田の妻にみだらなことをしかけた、それを見たという者が訴え出たのだが、事実は違う、事実は上田の妻が旅疲れで、失心して倒れ、付いていた舎人が助け起こしたのだ」