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きみつのみわく
機密の魅惑
大倉 燁子
「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,394 字 · 37 页
咄嗟の場合で、しかも男の人の眼に寝間着だか、平常着だかそんな見分けがつくはずがありません。それも有喜子がでたらめをしゃべったのです。
その時の若い人達の権幕に怯えてしまって、私は日本人が恐くなってしまいましたの。その上何のかのと蔭口を云われ、迚もうるさくて堪らないので、もうどこへも出まいと決心して西洋人以外の公の会合には一切顔を出さないことに定めてしまい、わずらわしい交際を避けてさばさばしていると、それがまた今度は婦人連の反感を買うもとになって、評判はますます悪るくなるばかり、散々に味噌をつけてしまいました。もうほとほと厭になったので、帰朝して静かに子供を教育しながら留守宅を守っていようかしらと思って居ります。しかし私がいなくなった後の有喜子の事など考えますと、意地にも夫の傍を離れるのがいやになります。『いよいよ敵打ちの時期が近づきました』などと変に怯かすように申されますと余りいい気持もいたしません。こんな女の申す事など本気で聞いても居りませんが、それでいて何となく底気味悪い不吉な予感に襲われるのでございます。
手紙を読み終るのを待ってS夫人が云った。