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きみつのみわく
機密の魅惑
大倉 燁子
「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,394 字 · 37 页
「こういう音信を受け取る度に、いろいろと慰めの返事を出して居りました。そのうちに便りがふッつりと途絶えてしまい、一ヶ月ばかり過ぎますと突然直ぐ来てくれという電報を貰ったんですの」
「覚えて居りますわ、でもせっかくあんなにお骨折りになったのに肝心の夫人はお亡くなりになってしまって――、やっぱり自殺だったのでございますか?」
「さあ、それをこれからお話しようと思うんですの、もうあれから二ヶ年も経ちましたから、お話してもいいだろうと思いますのよ」
夫人はスクラップブックを開いて、当時の新聞記事を見せてくれた。
『淋しく残る荷物に死の予感――、宮地(仮名)夫人謎の死』という題で、
『四月二十五日午後零時三十分神戸発の急行列車が東京駅に着いて乗客は全部降車したが二等車の中に、パラソルとショール、鰐皮のハンドバッグ、小さいスーツケース一個が遺留されて居り、荷物の持主の姿がどこにもない。事によると途中で振り落されたのではないかという疑いがあるので大騒ぎとなり、神戸東京間各駅に手配した結果、国府津附近に胴体を轢断され即死している婦人を発見、調査の結果宮地(仮名)夫人で夫の任地から上京の途中この奇禍にあったもので、自殺か、過失死か不明である。