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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
02 第二部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页
鐘が鳴るまでに、彼は、残された四問のうち二問だけを、まるで芋虫が蟻に襲撃されてでもいるかのように、いらいらした気持で片づけた。それが自信のある解答でなかったことは無論である。答案を提出して試験場を出ると、彼はすぐその足で便所に走っていった。便所から出て来た時の彼は、ちょっと気ぬけがしたような気持だった。が、もうほとんど人影のない渡り廊下を、校庭の方に向かって歩いて行くうちに、何ともいいようのない無念さがこみあげて来て、ひとりでに涙がこぼれた。彼は廊下の柱に両腕をあて、顔をうずめて、しばらく動かなかった。すると、
「次郎ちゃん、こんなところにいたんか。……どうしたんだい。」
と、恭一の声がすぐうしろの方からきこえた。
「ぼ、……僕、駄目だい。」
次郎は柱によりかかったまま、息ずすりした。恭一は悲痛な顔をして、しばらくうしろから彼を見つめていたが、
「みっともないよ。それに権田原先生が待ってるじゃないか。」
次郎は、やっと涙をふいて、恭一といっしょに校庭の方にあるき出した。そして問われるままに、成績のだいたいを話した。恭一は、国語の方の成績次第では、望みがまるでないこともない、といって慰めたが、そういう恭一本人が、非常に暗い顔をしていた。