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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
02 第二部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页
そう信じていれば、まず間違いはないね。……どうだい、叔父さんの言うことは少しむずかしかったかね。恭一君にはわかったろう。」
「ええ。」
と恭一はうなずいて次郎を見た。
次郎は、その時、一心に松の木を見つめていたが、日がかげっていたせいか、その顔色は、何となく、くすんで見えた。
三人は、間もなく弁当がらの始末をして、そこを去った。そしてそれっきり松の木の話は誰の口にものぼらなかった。しかし、次郎が、徹太郎と恭一とを心配させたほど考えこんだのは、それからのことであった。次郎は、その日じゅう、自分からはほとんど口を利かなかった。そして大きな木の根さえ見ると、立ちどまってじっとそれを見つめる、といったふうであった。
もっとも、このことが、その後次郎の気持にどれだけの影響を与えたかは、はっきりしなかった。彼は相変らす正木では「大人」であり、本田では反抗的であり、大巻では割合無邪気だった。ただいくらか変ったところがあったとすれば、それは徹太郎に対する彼の態度だった。徹太郎は、もう次郎にとって、ただの愉快な叔父さんではなくなっていた。その前で、べつに非常な窮屈さを感ずるというふうでもなかったが、何か知ら、これまでのように彼を友達あつかいに出来ないものを感じるらしかった。