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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
02 第二部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页
。
権田原先生が何よりも気がかりだったのは、次郎の顔から、大っぴらな笑いと怒りとが、次第にその影をひそめて行くことであった。笑うには笑っても、彼の笑いには時としてまるで声がなかった。以前のような、血の気にあふれた怒りなどは、ほとんど見られなくなっていた。そしてしばしば、可笑しくも何ともない、といった顔をしてみたり、腹を立てていながら、せせら笑いをしたりすることがあった。
「これはいかん。」
権田原先生は、おりおり一人でそうつぶやいた。そして、わざと教室でひょうきんなことを言ってみたり、校長に小言を食うほどの乱暴な競技を、組の生徒にやらしてみたりして、次郎の様子に注意していたこともあった。しかし次郎は、そんな時にも、いつも「大人」であり、めったに笑いも怒りもしなかった。
ところが、ある朝――それは夏休みが過ぎて間もないころのことだったが、――権田原先生が出勤すると、もう校長が教員室に待っていて、いかにも仰山らしく言った。
「君、ゆうべは大変なことがありましたね。何でも君の組の本田が主謀者らしいですよ。」
だんだん聞いてみると、次郎たちの仲間が十四五名で、隣村の青年たち四五名と、大川の土堤で乱闘をやり、相手にかなりひどい傷を負わせたというのである。