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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

02 第二部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页

青空文庫

」

「ありません。頬っぺたが少しはれてる者はあります。」

「青年たちには、ずいぶんけがをさしたらしいね。」

次郎は首をたれて默りこんだ。権田原先生も默ってしばらく顎鬚をむしっていたが、

「いったい、竹竿とか、棒切とか、砂利とかをつかって、そんな陣立をしたのは誰の考えなんだ。」

「僕です。」

と、次郎ははっきり答えた。

「面白い陣立だね。戦うからには、そのくらいの智慧は出す方がいい。それは卑怯だとは言えん。」

次郎は少し得意だった。

「だが、本田――」

と、権田原先生は相変らすず顎鬚をむしりながら、

「お前は喧嘩をするのが、やはり今でもそんなに面白いのか。」

「面白くなんかありません。」

次郎は少し憤慨したような調子だった。

「じゃあ、何でそんな真似をしたんだ。」

「僕、正しいと思ったからです。」

「正しい? なるほど相手が悪いことをしたんだから、これを懲らすのは正しいともいえる。だが、お前は誰に頼まれてそれをやったんだ。」

「誰にも頼まれてなんかいません。」

次郎は昂然となった。

「ふむ。……じゃあ、誰に許されてやったんだ。」

次郎は解せないといった眼付をして、じっと権田原先生の顔を見つめた。