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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
02 第二部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页
」
と、いくぶん恭一をなだめるような調子だった。
すると恭一は今度はお芳の方を向いて、いかにも詰問するように言った。
「母さんも、あすの方がいいと思ってるんですか。」
お芳は、例の笑くぼをかすかにゆがませ、お祖母さんの顔をうかがったきり、返事をしなかった。
「じゃあ、もういいんです。」
恭一は、捨台詞のようにそう言って、すぐ二階にかけあがった。
二階では、次郎が一人、蟇口を机の上において、ぽつねんと坐っていたが、恭一の顔を見るとすぐ言った。
「僕、今日、父さんにこの蟇口を買ってもらったよ。」
「ふうん、小遣も入れてもらったんかい。」
「うむ、一円だけ。」
「一円じゃあ、雑誌なんか買ったら、すぐなくなっちまうよ。それでひと月分だって言ったんかい。」
「ううん、二円ぐらいはつかってもいいんだって。」
「二円ならまあいいや。それで、あと一円は、いつくれるんだい。」
「この金がなくなったら、母さんにそう言ってもらうんだって。」
「ふうん――」
恭一は解せないといった顔だった。
「恭ちゃんは誰にもらってるの?」
「父さんでなけりゃ、お祖母さんさ。お金を母さんにねだるのはいけないよ。